RESEARCH REPORT / 戦略実行研究センター

中小企業の社員は、本来の力の7割に満たない。
「埋もれた利益」は、1人あたり年159万円

疲れているのではない。戦略が、現場に届いていないのだ。── 全国570名の実態調査が突き止めた、その真因。

戦略実行の実態調査2026|有効回答570名(全国・規模別)|調査主体:ネクセント株式会社 戦略実行研究センター|2026年7月公開

企業が掲げた戦略は、現場でどこまで実行されているのか。ネクセント株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:額宮良紀)戦略実行研究センターは、全国の現場社員・管理職570名を対象に、戦略が実行される過程で失われる利益を定量的に測定した「戦略実行の実態調査2026」を実施しました。制度が「あるか」ではなく、現場に「届いているか」を測る設計により、戦略と現場のあいだに横たわる断絶と、そこで失われている利益の規模を明らかにしました。

58.6%
自社の戦略を
自分の言葉で説明できない
−44.2 pt
管理職→一般社員で
戦略が届く率が急落
159 万円
1人あたり年間の
埋もれた利益(中小企業)

FINDING 01戦略は、現場に届いていない

出発点となる事実は明快です。回答者の58.6%が、自社の戦略を自分の言葉で説明できないと回答しました。「ほぼ正確に説明できる」と答えた人は10.9%にすぎません。さらに、戦略どおりに動けている(戦略が自分の行動に反映されている)人はわずか6.8%、15人に1人。裏返せば46.5%が、自らの行動に戦略が反映されていないと答えています。

では、戦略はどこで消えるのか。戦略の伝達ルート(経営層→管理職→一般社員)に沿って「戦略を説明できる率」を立場別に見ると、断絶の位置が特定できます。中小企業の管理職では73.7%が説明できるのに、一般社員では、まるで崖から落ちるように29.4%へ急落します(差44.2ポイント)。主眼は一点 ── 現場の一般社員に、戦略が届いていないということです。

図1. 戦略を説明できる率(立場別・中小企業)── 管理職では届き、一般社員で急落する
経営層(起点※)
100%
管理職
73.7%
一般社員
29.4%

※経営層は戦略の発信主体であり本調査の対象外のため、伝達の起点として100%と置いた概念値(実測ではない)。管理職→一般社員で44.2ポイント急落する。これは、戦略そのものが弱いのではなく、戦略を現場の言葉に翻訳する機能が欠落していることの直接的な証拠です。

FINDING 02その結果、本来の力が発揮されていない

戦略が現場に届かなければ、力は発揮されません。この「届かなさ」は、力の未発揮に直結します。中小企業では79.2%が本領を発揮できていない状態(発揮度90%未満)にありました。

本来発揮できる力を100としたとき、実際に失われている割合を、本調査では実行ロス(=100−発揮度)と呼びます。中小企業の平均発揮度は約68%、すなわち本来の力の7割に満たず、実行ロスは平均31.7%にのぼります。以降で見ていくのは、この失われた3割強がどこで、なぜ生じているのかです。

FINDING 03実行ロスの真犯人は、疲れではなく「組織のしくみ」

現場で力が発揮されていない。よくある見立ては「みんな疲れている・体調が悪いからだ」というものです。確かに、体調の悪い人ほど発揮できていない、という関係は一見すると見えます。

ところが、「体調」と「実行基盤(戦略が現場に届いているか)」を並べて、どちらが本当に効いているのかを競わせると、不思議なことが起きました ── 体調の悪さの"効き目"が、すーっと消えてしまったのです(統計的には、不調症状の効果がβ=+0.03へと有意性を失った)。代わりに残ったのは「実行基盤が整っていない」の方でした。

疲れているのではない。
戦略が、現場に届いていないのだ。

"体調が悪くて発揮できない"ように見えていた人の多くは、実は「戦略が届かず、しくみが回っていない職場」で働いていた。疲れは結果であって、真犯人は組織の側にあった ── そういう構図です。

その裏づけとして、しくみ(実行基盤)を肯定的に評価する層と否定的に評価する層を比べると、実行ロスに13.4ポイントの差が現れます。

図2. 実行ロス(本領未発揮の割合)── しくみを肯定する層と否定する層で13.4ポイントの差
しくみ肯定派
25.4%
しくみ否定派
38.7%

中小企業を、しくみを肯定的に評価する層と否定的に評価する層に二分すると、実行ロスは肯定派25.4%に対し否定派38.7%。その差13.4ポイント(効果量d=0.56)は、統計的にも実質的にも小さくありません。

補足・試算 / ESTIMATE実行ロスを、金額に換算する ── 1人あたり年159万円

ここまでが本調査の発見です。最後に、その実行ロスを金額に換算しておきます。回答者が実際に申告した年収と、同じ回答者について測定した実行ロスを掛け合わせると、中小企業では1人あたり年159万円分の力が、成果に転換されないまま失われている計算になります(中央値135万円、感度分析151〜168万円。159万円は下限側の見積り)。従業員50名の企業なら、年 約8,000万円です。

この失われた159万円は、実行基盤を現場で機能させることができれば取り戻せる余地でもあります。その意味で、これは「埋もれた利益」とも言えます

※本調査でいう「埋もれた利益」は、実測した年収と実測した実行ロスの積として算出した、会計上の利益や埋没費用(サンクコスト)とは異なる本調査独自の概念です。すでに支出され回収不能なサンクコストと違い、実行基盤を機能させれば掘り起こせる利益を指します。

8,000 万円
従業員50名企業の
年間の埋もれた利益
2,000-2,400 万円
うち実行基盤の
不在に起因する分
数百億
地域・産業単位で
積み上げた規模感
「給与の低さ」は損失のヘッジにならない

しくみを否定的に評価する層は、肯定派より平均年収が低い(461万円<579万円)にもかかわらず、1人あたりの損失額はむしろ大きい(174万円>145万円)。人件費を抑えても、実行基盤が伴わなければ損失はかえって膨らむ。埋もれた利益は、給与水準ではなく実行のしくみによって決まっています。

この損失は、個社の経営課題であると同時に、集計すれば地域・社会の課題となります。戦略実行の底上げは、個々の企業の生産性のみならず、地域経済の未活用資源を掘り起こす政策テーマとして位置づけられます。そして埋もれた利益は、固定費ではありません ── 実行基盤を現場で機能させることができれば、掘り起こせる利益です。

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SURVEY OVERVIEW調査概要

調査名
戦略実行の実態調査2026
調査主体
ネクセント株式会社 戦略実行研究センター
調査方法
インターネットパネル調査(調査システム:Questant)
調査対象
全国の現場社員・管理職。経営トップは分析対象から除外
有効回答
570名(中小企業307/大企業168/零細89/規模不明6。一般社員434/管理職136)
実施時期
2026年
主な指標
戦略実行度、実行ロス(発揮度の逆算・東大1項目式に準拠)、実行基盤(求心力・機動力・実装力の三本柱/各α≧0.88)
指標 数値 補足
自社戦略を説明できない 58.6% 「ほぼ正確に説明できる」は10.9%
戦略どおりに動けている 6.8% 15人に1人
本領未発揮(中小企業) 79.2% 発揮度90%未満
説明できる率の急落(管理職→一般社員) −44.2pt 73.7%→29.4%
実行ロス(中小企業平均) 31.7% 大企業28.4%・零細29.7%を上回る
フル発揮率(中小企業) 20.8% 大企業36.3%・零細36.0%に対し中小だけ低い
埋もれた利益(中小企業) 年159万円/人 中央値135万円・感度151〜168万円
■ 引用・転載について
本調査結果は、出典を明記のうえ自由に引用・転載いただけます。ご利用の際は「ネクセント株式会社 戦略実行研究センター『戦略実行の実態調査2026』」と表記し、可能であれば本ページへのリンクをお願いいたします。図表の高解像度データをご希望のメディア関係者様は、お問い合わせ先までご連絡ください。

■ 参考:既存研究との関係
同じ発揮度測定(東大1項目式)を用いた東京大学・横浜市経済局の中小企業調査(2017年度)は、健康リスクの角度から1人あたり年73.0万円の損失を推計しています。本調査は同一の測定を「実行基盤」という別の角度から捉え直したものであり、両者は同一現象への相互補完的なアプローチです(損失額の差は対象集団・角度の違いによるもので、経年比較ではありません)。
この調査を実施したネクセント株式会社について

ネクセントは「戦略実行の型と完遂メソッド」を提供するコンサルティング会社です。立てた戦略を現場の行動へ確実に変える「しくみ」の構築を、試用・検証を重ねるアジャイルな4ステップで支援します。本調査で示した「実行基盤(求心力・機動力・実装力)」は、その支援の理論的基盤です。戦略実行を弱めているしくみ上の問題点を整理する60分無料の個別対話会を実施しています。

ネクセント株式会社|戦略実行研究センター
東京都新宿区新宿2-15-22 8階/設立2006年8月/代表取締役 額宮良紀
お問い合わせ:050-1785-7227 / https://www.nexcent.co.jp/
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