RESEARCH REPORT / 戦略実行研究センター
現場では実力の3割が未発揮のまま。なぜ?
会社の戦略が、現場の行動になっていない。
本来の実力の3割が、発揮されないまま失われている。
分かれ目は、立場でも、戦略の理解度でもなかった。―― 全国570名の実態調査が突き止めた、実力が発揮されない本当の分かれ目。
決めたはずの戦略が、形だけになり、いつのまにか元に戻ってしまう。企業が掲げた戦略は、現場でどこまで実行されているのでしょうか。ネクセント株式会社 戦略実行研究センター『戦略実行の実態調査2026』(2026年6月調査・全国570名)では、会社の戦略が自分の行動に反映されていない人が46.5%を占め、本来の実力に対する平均の未発揮率(実行ロス)は30.3%でした。
実行ロスの大小を分けていたのは、本人のコンディションではなく、現場から見て、会社の戦略実行のしくみが機能しているかどうかでした。そして、しくみの何が分けていたのかを絞り込むと、立場(管理職か一般社員か)でも、戦略を理解しているかどうかでもなく、戦略が日々の行動になっているかでした。これは中小企業に限らず、会社の規模を問わず広がっていました。
制度が「あるか」ではなく、戦略が現場の行動に「反映されているか」を測る設計により、実力が発揮されない理由の所在を明らかにしています。
反映されていない人の割合
全体 N=570
これだけ発揮されていない(実行ロス)
全体 N=570
反映されている人は22.6%
反映○ n=305・反映× n=265
FINDING 01実行ロスは、個人の不調より会社のしくみと結びついていた
現場の一人ひとりは、自分の力を出し切れていません。そう聞いてまず思い浮かぶのは、疲れや睡眠不足、気分の落ち込みといった心身のコンディションでしょう。本調査は、まずこの見方に沿って確かめました。結果は違いました。
睡眠・運動・心身の不調と実行ロスとの結びつきは弱いものでした。一方、現場から見て、会社の戦略実行のしくみ(実行基盤=求心力・機動力・支援力の三本柱)が機能しているかどうかは、より強く結びついていました。実行基盤とは、「会社が立てた戦略を、未経験の行動であっても現場が実行できるように、会社主導で整備すべきしくみ」を指します。ネクセント株式会社『戦略実行の実態調査2026』(2026年6月調査・全国570名)で4要因を同時に置いて比べると、実行ロスとの結びつきの強さ(標準化係数)は、会社のしくみが0.28で最も大きく、睡眠0.13、運動0.05、心身の不調0.03と続きました。
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| 実行基盤 | 会社が立てた戦略を、未経験の行動であっても現場が実行できるように、会社主導で整備すべきしくみ。 |
| 求心力 Strategic Alignment |
会社が、戦略の背景や意図について対話を重ね、現場の共感を得ることで、現場が自分の言葉で語れる状態で動き出せること。 |
| 機動力 Organizational Agility |
会社が、現場が抱え込む障害を引き取り、解消する意思決定を素早く行うことで、現場が自ら行動を加速できること。 |
| 支援力 Frontline Enablement |
会社が、現場の完遂と学習を継続的に支え、現場からの知見に学ぶことで、現場が主体的・自律的に動き続けられること。 |
当社は、3つが揃って備わっていることを実行基盤の基本要件としています。
| 要因 | 標準化係数 | p値 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 会社のしくみ(三本柱) | 0.28 | p<0.001 | 確認できる |
| 睡眠 | 0.13 | 0.005 | 確認できる |
| 運動 | 0.05 | 0.226 | 確認できず |
| 心身の不調 | 0.03 | 0.503 | 確認できず |
判定は有意水準5%によります。運動と心身の不調は統計的に確認できず、0と区別がつきません。
心身の症状を一つずつ見ても、この絵は崩れませんでした。症状別に「あり群 − なし群」の実行ロス差を見ると、多重比較の調整後に有意なものは11件中ひとつもありません(最大は気分の落ち込みの+8.17ポイント、q=0.068)。
ただし、「体調は関係ない」とは言っていません。 睡眠は0.13という結びつきを残しており(p=0.005)、その他の症状も「影響しない」のではなく「確認できなかった」だけです。また、しくみで説明できるのは実行ロスの一部にすぎません(説明力 R²は、三本柱0.12、体調系0.08、同時投入で0.14)。残りの多くは、この調査の外にあります。
では、その「しくみ」の何が実行ロスを分けているのでしょうか。
FINDING 02分かれ目は「分かっているか」ではなく「行動になっているか」
ありがちな見方は2つあります。「管理職はできていて一般社員はできていない=立場の問題」と、「戦略を理解しているかどうかの問題」です。本調査は、どちらでもないという結果でした。
立場の差は、見かけでした。 実行ロスは管理職24.5%(n=136)、一般社員32.1%(n=434)で、たしかに7.6ポイントの差があります(p=0.0007)。ところが、その差の正体は人数構成でした。管理職は「戦略が行動に反映されている」人が76%(103/136)を占め、一般社員は反映されていない人が53%(232/434)と半数を超えます。反映の有無をそろえて比べると、立場による差はほとんど消えます。
| 実行ロス | 反映されている | 反映されていない |
|---|---|---|
| 管理職 | 20.0%(n=103) | 38.6%(n=33) |
| 一般社員 | 23.9%(n=202) | 39.3%(n=232) |
※一般社員の2セル(23.9%・39.3%)は、反映別の全体値から管理職を差し引いて算出した再集計値です。
管理職の実行ロスは、反映されていれば20.0%(n=103)、反映されていなければ38.6%(n=33)。一般社員は同じく23.9%(n=202)と39.3%(n=232)です。反映されていれば管理職も一般社員も約2割、反映されていなければどちらも約4割近くなります。管理職の実行ロスが小さく見えるのは、管理職が優秀だからではなく、戦略が行動に反映されている人が多いからです。実際、実行ロスの回帰に変数を段階的に足すと、単独では効いていた管理職ダミー(標準化係数 −0.294)は、「行動に反映されているか」を入れた時点でほぼ0になります(−0.066 n.s.、しくみを加えて −0.073 n.s.)。
「戦略を分かっているか」でも分かれませんでした。 戦略を自分の言葉で説明できる率は一般社員31.8%、管理職72.1%と大きく違いますが、行動への反映とあわせて見ると、説明できるかどうかは単独では差を残しません。
| 実行ロス | 反映されている | 反映されていない |
|---|---|---|
| 説明できる | 22.6%(n=190) | 33.5%(n=46) |
| 説明できない | 22.7%(n=115) | 40.4%(n=219) |
説明できて反映もされている人の実行ロスは22.6%(n=190)、説明できないが反映されている人は22.7%(n=115)。一方、説明できても反映されていない人は33.5%(n=46)、説明も反映もない人は40.4%(n=219)でした。実行ロスは行(反映)で大きく変わり、列(説明)ではほぼ変わりません。戦略を説明できる人のなかでも、それが日々の行動に反映されていない人は実行ロスが大きくなっています。ネクセント株式会社『戦略実行の実態調査2026』(2026年6月調査・全国570名)では、戦略が行動に反映されていない層の実行ロスは39.2%(n=265)で、反映されている層の22.6%(n=305)を16.5ポイント上回りました。
なお、この開きは丸め前の値から算出しています(39.17 − 22.63 = 16.53)。表示値どうしの引き算(39.2 − 22.6)とは0.1ポイント異なります。
反映されている層でも実行ロスは22.6%残っています。反映されていれば実行ロスがなくなるわけではありません。それでも、反映されているかどうかが、実行ロスの大小をもっともはっきり分けていました。
本調査は相関を扱うものであり、因果の向きまでは言えません。「反映されているから発揮できる」のか「発揮できているから反映されていると感じる」のかは、この調査では区別できません。
FINDING 03これは中小企業だけの問題ではない
これは中小企業に特有の現象なのでしょうか。会社の規模ごとに、一般社員の実行ロスを見比べました。
零細 n=83/中小 n=231/大企業 n=115(横軸の上限は40%)。図の一般社員は 83+231+115=429名(規模不明5名を除く。全体では規模不明は6名で、うち管理職が1名。要旨・付録の一般社員434名は全体)。規模による差は統計的に確認できず(p≈0.80)。相関であり因果ではありません。
一般社員の実行ロスは、零細30.6%(n=83)、中小32.9%(n=231)、大企業31.9%(n=115)。零細でも、中小でも、大企業でも、およそ3割前後で横ばいでした。規模による差は統計的に確認できません(p≈0.80)。図の一般社員は 83+231+115=429名です(規模不明5名を除きます。全体では規模不明は6名で、うち管理職が1名。要旨・付録の一般社員434名は全体です)。
ただし「規模によって差がない」と言い切っているのではなく、差が確認できなかっただけです。それでも、一般社員が実力を出し切れていない状態は、中小に限らず、どの規模の会社にも広がっていました。大きな会社にいるから実行ロスが小さい、という関係は確認できませんでした。
ESTIMATE回収余地(参考)|反映を揃えて消えるのは7.7ポイント
ここまでが本調査の発見です。最後に、この結果が示す「回収の余地」を確かめます。
反映されていない人が、反映されている人と同じ水準まで動いたとします。それで消えるのは7.7ポイントです。全体の実行ロス30.32%から、反映されている層の実行ロス22.63%を引いた値にあたります。
※7.7ポイントは、相関を因果として読む仮定と、全員が移行できるという仮定を置いた上限値です。この但し書きを外して単独で使える数字ではありません。
それでも、実行ロスは22.6%残ります。戦略が行動に反映されている層(n=305)でも、この水準は残っていました。反映を整えれば終わり、ではありません。
実際、実行ロスの回帰では、「行動に反映されているか」を入れたあとでも、しくみ(三本柱)そのものが独立して結びつきを残しています(標準化係数 −0.205 と −0.248)。手をつける先は、反映の一点ではなく、しくみの側です。
CONCLUSION結び|打ち手は、個人のケアではなく、しくみの側にある
以上をまとめます。実行ロスは小さくない規模で存在し、その大小は本人のコンディションよりも会社のしくみに表れ、分かれ目は戦略が日々の行動になっているかどうかにあり、しかもこれは規模を問わず広がっていました。
だとすれば、手を打つ鍵は、個人の心身のコンディション対策ではなく、戦略が日々の行動に反映される(そして成果につながる)しくみを、会社として整えることにあります。―― 私たちはそう考えます。
調査レポート全文(PDF・全11ページ)を公開しています
調査設計・測定方法・解析ロジック・主要集計表を含む完全版です。出典明記のうえ、公表された調査結果の数値を引用・転載いただけます。
レポート全文をダウンロード 60分無料の個別対話会に申し込むSURVEY OVERVIEW調査概要
- 調査名
- 戦略実行の実態調査 2026
- 調査主体
- ネクセント株式会社 戦略実行研究センター
- 調査方法
- インターネットパネル調査。抽出単位は個人であり、企業ではありません
- 調査時点
- 2026年6月(発行:2026年8月)
- 本調査の位置づけ
- 2026年1月に中小企業を対象とした探索的な調査を行い、その結果を踏まえて、対象を全国・全規模に広げ、測定尺度を新たに設計したのが本調査です
- 調査対象
- 全国の現場社員・管理職。経営トップは分析対象から除外
- 有効回答
- 570名(総回答589件 → 非就業3名・経営トップ3名を除き583件 → 回答品質の検証で13件を除外)
- 標本構成(規模)
- 中小企業307/大企業168/零細企業89/規模不明6
- 回答者の立場
- 一般社員434/管理職136
- 主な指標
- 戦略実行度、実行ロス(発揮度の逆算=100−発揮度)、実行基盤(求心力・機動力・支援力の三本柱/各4件法)
- 実行ロスの準拠元
- 東京大学・横浜市の中小企業調査(2017年度)の設問(東大1項目式)に準拠しています。ただし準拠したのは 回答形式(1項目で、本来発揮できる状態を100%として自己評価し、100からの差を取る)であり、 評価対象は健康起因に限定していません。集中力・仕事の進め方・成果を含むことを明示したうえで、0%・100%の目安を提示しています。したがって本調査の実行ロスは、健康起因に限定した指標より広い範囲を捉えており、 両者の値は直接比較できません。
- 尺度信頼性
- 求心力 α=.902/機動力 α=.880/支援力 α=.902
- 測定尺度
- 実行基盤(三本柱12問)は当社独自の指標であり、設問文は非公開です
- 統制変数
- 図Aのモデルは、しくみと体調の2系統を比較するためのもので、年代・立場・従業員規模などの統制は行っていません。集計表6(b)は、立場・行動への反映・しくみを段階的に投入したモデルです
主な数値の一覧
| 指標 | 数値 | 母集団・補足 |
|---|---|---|
| 戦略が自分の行動に反映されていない | 46.5% | 全体 N=570 |
| 実行ロス(平均の未発揮率) | 30.3% | 全体 N=570(30.32%) |
| 実行ロス|反映されている層 | 22.6% | n=305(22.63%) |
| 実行ロス|反映されていない層 | 39.2% | n=265(39.17%) |
| 開き(反映なし − 反映あり) | 16.5ポイント | 16.53ポイント。丸め前の値から算出 |
| 回収余地 | 7.7ポイント | 全体 N=570(30.32 − 22.63 = 7.69)。相関を因果として読む仮定と、全員が移行できるという仮定を置いた上限値 |
| 実行ロス|管理職 | 24.5% | n=136 |
| 実行ロス|一般社員 | 32.1% | n=434(立場差+7.6pt/p=0.0007) |
| 実行ロス|一般社員・零細 | 30.6% | n=83 |
| 実行ロス|一般社員・中小 | 32.9% | n=231(規模差は確認できず/p≈0.80) |
| 実行ロス|一般社員・大企業 | 31.9% | n=115 |
| 戦略を自分の言葉で説明できる率 | 一般社員31.8%/管理職72.1% | 一般社員 n=434/管理職 n=136 |
※本調査は横断データに基づく相関分析であり、変数間の因果を確定するものではありません。
本調査結果のうち公表された数値は、出典を明記のうえ引用・転載いただけます。以下の形式をそのままお使いいただけます。
開示方針
検証可能性を担保するため、段階的開示の方針をとっています。
| 対象 | 扱い |
|---|---|
| 調査手法・解析ロジック・主要集計 | 公開 |
| 全数値の一覧(台帳)・算出コード | ご請求に応じて提供 |
| 設問文(回答者に提示した文言) | 非公開 |
| 個票(回答者単位データ) | 非公開 |
本ページに記載された数値の算出根拠については、照会に応じます。
ABOUTネクセント株式会社について
ネクセント株式会社は、会社の戦略が現場の行動になるまでを扱う会社です。立てた戦略が現場の行動になり切れていない——この問題意識を抱える企業経営者に数多く出会ってきました。当社は、戦略実行のしくみ(実行基盤)を、求心力(現場の共感)・機動力(現場の障害除去)・支援力(現場の完遂と学習)の三本柱で測り、その結果にもとづいて、戦略が現場で回り続けるための実行基盤を、会社が自らの手で整えられるよう支えます。調査・研究は当社の研究機能「戦略実行研究センター」が担い、手法の概要と主要集計を https://www.nexcent.co.jp/survey-on-strategy-execution-2026.html で公開しています。当社は、本来の実力と、実際に発揮される実力との差を「実行ロス」と呼んでいます。ネクセント株式会社『戦略実行の実態調査2026』(2026年6月実施/2026年8月発行、全国の就業者570名)では、会社の戦略が自分の行動に反映されていない人が46.5%、実行ロスは平均30.3%でした。
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目15番22号 ランドワークビル8階(旧S2ビル)
設立2006年8月/代表取締役 額宮良紀
お問い合わせ:050-1785-7227 / https://www.nexcent.co.jp/
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