RESEARCH REPORT / 戦略実行研究センター
中小企業の社員は、本来の力の7割に満たない。
「埋もれた利益」は、1人あたり年159万円。
疲れているのではない。戦略が、現場に届いていないのだ。―― 全国570名の実態調査が突き止めた、その真因。
企業が掲げた戦略は、現場でどこまで実行されているのか。ネクセント株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:額宮良紀)戦略実行研究センターは、全国の現場社員・管理職570名を対象に、戦略が実行される過程で失われる利益を定量的に測定した「戦略実行の実態調査2026」を実施しました。制度が「あるか」ではなく、現場に「届いているか」を測る設計により、戦略と現場のあいだに横たわる断絶と、そこで失われている利益の規模を明らかにしました。
自分の言葉で説明できない
(回答者全体570名)
戦略が届く率が急落
(中小企業307名)
埋もれた利益
(中小企業の年収回答者273名)
FINDING 01戦略は、現場に届いていない
出発点となる事実は明快です。回答者全体(570名)の58.6%が、自社の戦略を自分の言葉で説明できないと回答しました。「ほぼ正確に説明できる」と答えた人は10.9%にすぎません。さらに、戦略どおりに動けている(戦略が自分の行動に反映されている)人はわずか6.8%、15人に1人。裏返せば46.5%が、自らの行動に戦略が反映されていないと答えています。
では、戦略はどこで消えるのか。回答者が勤務する中小企業(従業員30〜499名)に絞り、戦略の伝達ルート(経営層→管理職→一般社員)に沿って「戦略を説明できる率」を立場別に見ると、断絶の位置が特定できます。管理職では73.7%が説明できるのに、一般社員では、まるで崖から落ちるように29.4%へ急落します(差44.2ポイント)。主眼は一点 ―― 現場の一般社員に、戦略が届いていないということです。
※経営層は戦略の発信主体であり本調査の対象外です。上段の100%は実測値ではなく、伝達の起点として置いた概念値であり、調査結果として引用できるものではありません。実測値は管理職73.7%・一般社員29.4%の2本で、その差は44.2ポイントです。これは、戦略そのものが弱いのではなく、戦略を現場の言葉に翻訳する機能が欠落していることの直接的な証拠です。
戦略が届かない職場ほど、方針は現場で急速に忘れられていきます。この“届かなさ”をしくみで埋め、方針を現場に定着させる打ち手は、80%の社員が方針を忘れる現実と、方針を現場の言葉に翻訳するしくみで解説しています。
FINDING 02その結果、本来の力が発揮されていない
戦略が現場に届かなければ、力は発揮されません。この「届かなさ」は、力の未発揮に直結します。回答者が勤務する中小企業では79.2%が本領を発揮できていない状態(発揮度90%未満)にありました。
本来発揮できる力を100としたとき、実際に失われている割合を、本調査では実行ロス(=100−発揮度)と呼びます。回答者が勤務する中小企業(従業員30〜499名)の平均発揮度は68.3%、すなわち本来の力の7割に満たず、実行ロスは平均31.7%にのぼります。100人分の人件費を払って、68人分の力しか出ていない計算になります。以降で見ていくのは、この失われた3割強がどこで、なぜ生じているのかです。
FINDING 03実行ロスの真犯人は、疲れではなく「組織のしくみ」
現場で力が発揮されていない。よくある見立ては「みんな疲れている・体調が悪いからだ」というものです。確かに、体調の悪い人ほど発揮できていない、という関係は実際にあります(心身のコンディション3変数だけで、実行ロスの11.8%を説明します)。
ところが、「体調」と「実行基盤(戦略を実行に移すために会社が備えるしくみ)」を同じ分析に入れて比べると、体調の側には、しくみを考慮してもなお残る“独自の”説明力が、ほとんどありませんでした(統計的には、倦怠感・疲労感を含む不調症状の効果が標準化偏回帰係数β=+0.03。0に近いほど独自の影響がないことを示します)。コンディション側で残ったのは、睡眠による休養感だけです(β=−0.19)。統計ではこれを「見かけの相関」と呼びます。
戦略が、現場に届いていないのだ。
“体調が悪くて発揮できない”ように見えていた人の多くは、実は「戦略が届かず、しくみが回っていない職場」で働いていた。疲れと実行ロスの関係は、しくみを介した見かけのものだった ―― そういう構図です(本調査は横断データに基づく相関分析であり、因果の向きを確定するものではありません)。
その裏づけとして、しくみ(実行基盤)を肯定的に評価する層と否定的に評価する層を比べると、実行ロスに13.4ポイントの差が現れます。
回答者が勤務する中小企業を、しくみを肯定的に評価する層と否定的に評価する層に二分すると、実行ロスは肯定派25.4%に対し否定派38.7%。その差13.4ポイント(効果量d=0.56)は、統計的にも実質的にも小さくありません。
真因が体調ではなく“しくみ”の側にあるのなら、次の問いは『では、そのしくみをどう作り直すか』です。戦略を現場の行動へ変える型と、立てた戦略の67%が失敗する落とし穴を避ける4ステップは、戦略実行とは何か――67%が失敗する理由と立て直しの4ステップで解説しています。
補足・試算 / ESTIMATE実行ロスを、金額に換算する ―― 1人あたり年159万円
ここまでが本調査の発見です。最後に、その実行ロスを金額に換算しておきます。回答者が実際に申告した年収と、同じ回答者について測定した実行ロスを掛け合わせると、回答者が勤務する中小企業(従業員30〜499名/年収回答者273名)では1人あたり年159万円分の力が、成果に転換されないまま失われている計算になります(中央値135万円、感度分析151〜168万円)。従業員50名の企業なら、年 約8,000万円に相当する計算です。
この失われた159万円は、実行基盤を現場で機能させることができれば取り戻せる余地でもあります。その意味で、これは「埋もれた利益」とも言えます。
※年収は階級代表値による換算であり、対象の約4割を占める「400万円未満」の置き方が結果に最も影響します。本推計では300万円と保守的に採用しました。また回答品質の検証で単調回答者をさらに除外した場合、しくみによる差は縮小します(詳細はレポート全文の感度分析を参照)。
※本調査でいう「埋もれた利益」は、実測した年収と実測した実行ロスの積として算出した、会計上の利益や埋没費用(サンクコスト)とは異なる本調査独自の概念です。すでに支出され回収不能なサンクコストと違い、実行基盤を機能させれば掘り起こせる利益を指します。
年間の埋もれた利益
(159万円×50名の計算)
不在に起因する分
(本調査が金額として算出できた範囲)
しくみを否定的に評価する層は、肯定派より平均年収が低い(461万円<579万円)にもかかわらず、1人あたりの損失額はむしろ大きい(174万円>145万円)。人件費を抑えても、実行基盤が伴わなければ損失はかえって膨らむ。埋もれた利益は、給与水準ではなく実行のしくみによって決まっています。
この損失は、個社の経営課題であると同時に、集計すれば地域・社会の課題となります。戦略実行の底上げは、個々の企業の生産性のみならず、地域経済の未活用資源を掘り起こす政策テーマとして位置づけられます。そして埋もれた利益は、固定費ではありません ―― 実行基盤を現場で機能させることができれば、掘り起こせる利益です。
調査レポート全文(PDF・全21ページ)を公開しています
調査設計・測定方法・解析ロジック・図表データを含む完全版。出典明記のうえ、公表された調査結果の数値を引用・転載いただけます。
レポート全文をダウンロード 60分無料の個別対話会に申し込むSURVEY OVERVIEW調査概要
- 調査名
- 戦略実行の実態調査2026
- 調査主体
- ネクセント株式会社 戦略実行研究センター
- 調査方法
- インターネットパネル調査(調査システム:Questant)。抽出単位は個人であり、企業ではありません
- 調査対象
- 全国の現場社員・管理職。経営トップは分析対象から除外
- 有効回答
- 570名(中小企業307/大企業168/零細89/規模不明6。一般社員434/管理職136)
- 実施時期
- 2026年6月
- 主な指標
- 戦略実行度、実行ロス(発揮度の逆算・東大1項目式に準拠)、実行基盤(求心力・機動力・支援力の三本柱/各α≧0.88)
- 測定の準拠
- 発揮度の測定は東京大学・横浜市による中小企業調査(2017年度)で用いられた設問(東大1項目式)に準拠しつつ、評価対象を明示(集中力・仕事の進め方・成果を含む)し、0%・100%の目安を提示しています
- 測定尺度
- 実行基盤(三本柱12問)は当社独自の指標であり、設問文は非公開です
| 指標 | 数値 | 母集団・補足 |
|---|---|---|
| 自社戦略を説明できない | 58.6% | 回答者全体570名。「ほぼ正確に説明できる」は10.9% |
| 戦略どおりに動けている | 6.8% | 回答者全体570名。15人に1人 |
| 本領未発揮 | 79.2% | 中小企業307名。発揮度90%未満 |
| 説明できる率の急落(管理職→一般社員) | −44.2pt | 中小企業307名。73.7%→29.4% |
| 実行ロス(平均) | 31.7% | 中小企業307名。平均発揮度68.3%の裏返し |
| フル発揮率 | 20.8% | 中小企業307名。大企業36.3%・零細36.0%に対し中小だけ低い |
| 埋もれた利益 | 年159万円/人 | 中小企業の年収回答者273名。中央値135万円・感度151〜168万円 |
※本調査は横断データに基づく相関分析であり、変数間の因果を確定するものではありません。
本調査結果のうち公表された数値は、出典を明記のうえ引用・転載いただけます。ご利用の際は「ネクセント株式会社 戦略実行研究センター『戦略実行の実態調査2026』」と表記し、可能であれば本ページへのリンクをお願いいたします。なお、実行基盤の測定尺度(設問文)は当社独自の指標であり、公開の対象外です。図表の高解像度データをご希望のメディア関係者様は、お問い合わせ先までご連絡ください。
■ 参考:既存研究との関係
同じ発揮度測定(東大1項目式)を用いた東京大学・横浜市経済局の中小企業調査(2017年度)は、健康リスクの角度から1人あたり年73.0万円の損失を推計しています。本調査は同一の測定を「実行基盤」という別の角度から捉え直したものであり、両者は同一現象への相互補完的なアプローチです(損失額の差は対象集団・角度の違いによるもので、経年比較ではありません)。
ネクセント株式会社は、戦略実行を専門とするコンサルティング会社です。立てた戦略を現場の日々の行動に変える「実行基盤」を構築し、本来の力が7割どまりになる「実行ロス」の解消を支援します。実行基盤は、(1)求心力(会社の戦略が現場の言葉と行動に翻訳される)、(2)機動力(現場の行動を妨げる障害を即座に取り除き、意思決定を機動的にできる)、(3)支援力(現場が自ら判断し実践できるよう、会社が条件を整え、支える)の三本柱から成ります。当社が信条とするのは「スチュワードシップ」――経営者の意思決定が、環境が変わっても組織のなかで一貫して活き続ける状態を護ることです。戦略実行を弱めているしくみ上の問題点を整理する60分無料の個別対話会を実施しています。
東京都新宿区新宿2-15-22 8階/設立2006年8月/代表取締役 額宮良紀
お問い合わせ:050-1785-7227 / https://www.nexcent.co.jp/
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